脳血管治療センター
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THE JIKEI UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE

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脳動脈瘤塞栓術について
■当院における脳動脈瘤患者数
毎年約300人の動脈瘤患者さんが当科を受診し、そのうち約3人に一人の患者さんが治療を受けております。 2003年の血管内治療センター設立から約3200人の脳動脈瘤患者さんが外来を受診し、治療・未治療に関わらずその後も当科にて経過観察を行っています。。
■脳動脈瘤コイル塞栓術について
脳動脈瘤運に対する血管内手術は1990年カリフォルニア大学ロサンゼルス校において開発されたGulielmi Detachable Coil ®(GDC)の出現によって急速に拡大しました。GDCはプラチナ製の柔軟なコイルがステンレス製のガイドワイヤーに接続されたものであり、放射線投透視下にマイクロカテーテルを介して脳動脈瘤内に留置されます。 コイルが動脈瘤内で適正な位置で固定されるまで何度でもカテーテルから出し入れをすることが可能であり、最終的に適切な位置に留置されたことを確認した後、通電によりステンレスワイヤーより切り離します。現在10種類を超える様々なコイルが各種医療機器メーカーより販売され、臨床上使用されています。 さらに最近では生体吸収性ポリマーでコーティングされたコイル(マトリックスコイル®:日本ストライカー)も使用されており、治療された動脈瘤の再開通予防に対する効果が期待されています。
《 実際の症例資料 》
■脳動脈瘤に対する治療選択 (開頭手術と血管内治療の比較)
2002年にLancet より報告されたInternational Study of Aneurysm Therapy (ISAT) では破裂脳動脈瘤における開頭手術と血管内治療による手術成績が比較されました。開頭クリッピング術、血管内治療どちらの治療法も適当と判断された破裂脳動脈瘤患者を無作為に開頭手術群(1070例)と血管内治療群(1073例)に振り分け、治療後2ヶ月、1年後、の治療成績を評価しました。一年後の「自立不能ないし死亡」例を比較した場合、血管内治療群では801例中190例(23.7%)であり、開頭手術群では793例中243例(30.6%)と血管内治療群の予後が開頭術に勝るという結果でした。また開頭術に対して脳血管内治療の相対的 / 絶対的なリスク減少率はそれぞれ22.6% / 6.9%でした。

未破裂脳動脈瘤に対して同様の比較を行った無作為臨床試験はありませんが、現在までのさまざまなデータの蓄積により、一般的な見解としては“血管内治療で再開通(再発)の頻度がやや高い傾向にあるものの、いずれの治療法でも長期予防効果がある”と考えられています。
■治療適応
近年未破裂脳動脈瘤の破裂率に関しての研究データが数多く発表されております。また我々の施設内でのデータを解析した結果、脳動脈瘤の破裂率は“場所”と“大きさ”に相関することがわかってきました。

我々の施設では5mmより小さな脳動脈瘤に関しては原則的に経過観察をお勧めしています。施設内データを評価しても5mm以下の動脈瘤の一年間での破裂率は 0.4%以下であり、治療のリスクを正当化することが困難になります。 しかしながら1)経過中に増大傾向 / 形状の変化を認める動脈瘤、2)治療のリスクを考慮しても御本人が治療を非常に強く望む場合には5mm以下の動脈瘤であっても治療を行うことがあります。
■治療方法(血管内治療)
最も血管内治療に適した根治性の高い動脈瘤は瘤の長径に対して基部(ネック)の狭い(small neck)動脈瘤です。 ネックの広い動脈瘤では一本のカテーテルで完全に動脈瘤を閉塞することは困難であり、下記のような様々な補助的なテクニックが使用されることがあります。

1)ステント併用療法 (金属のメッシュであるステントを親血管内に留置することで、動脈瘤内のコイルが親血管に逸脱することを防ぐ)
2)バルーン併用療法 (バルーン(風船)つきのカテーテルを親血管内で一時的に膨らませることにより動脈瘤内のコイルが親血管に逸脱することを防ぐ)
3)ダブルカテーテル・テクニック (マイクロカテーテルを二本使用することによりコイルを絡めながら瘤内で安定させていく技術)

比較的脳の表層に存在する脳動脈瘤 (中大脳動脈動脈瘤、前大脳動脈動脈瘤)などで血管内治療が困難と判断された症例は開頭クリッピング術をお勧めすることがあります。

術前の評価: CTもしくはMRIにて動脈瘤が指摘された場合、血管内治療の治療戦略を立てるために手術に追加の画像検査を試行することがあります。3次元構築できる3D CT Angiographyや、3DDSA機能を利用し、術前に動脈瘤の3次元的形態を正確に評価します。
《 3D DSA画像 》
■手技の実際
基本的に全身麻酔下で試行します。原則として最低2名の脳血管内治療医で治療を行います。ガイディングカテーテルと呼ばれる内径が約2-3mmのカテーテルを頚部の動脈(内頚動脈あるいは椎骨動脈)に留置します。 次にマイクロカテーテルと呼ばれる極細(内径500μm-1mm )のカテーテルを慎重に頭蓋内の動脈瘤まで誘導します。この際、ロードマップという機能を使用します。ロードマップとは血管撮影で得た血管の走行をモニター上に残像させることにより、この残像の中でカテーテルを操作することで安全にカテーテルを動脈瘤内に導くことができる機能です。

次にコイルを動脈瘤の中に慎重に挿入します。コイルは直径が2mmから30mmまで各種のサイズがあり、動脈瘤の大きさ、形状にあわせて選択されます。通常6mm程度の直径の動脈瘤であれば5-6本のコイルを使用して完全閉塞することができます。瘤が完全に閉塞されていることを血管撮影で確認の後手技を終了します。



離脱式コイル
■治療後の経過
瘤の入り口(ネック)が広く、コイルの表面に血栓が付着する可能性が高い場合は、血栓が末梢に飛ぶ危険性が高いと考え、術後にアスピリン等の抗血小板薬の内服が必要になることがあります。手術当日は集中治療室で経過観察をし、翌日特に問題がなければ一般病棟に移動となります。手術翌日より食事、歩行ともに可能であり、手術後3日から5日で退院が可能となります。

コイル塞栓術の欠点は、開頭クリッピング術に比較して治療された脳動脈瘤の再開通が生じる可能性があることです。脳動脈瘤を傷つけないためにコイルは非常に柔らかい素材で構成されています。よって治療後血流にさらされることによって形状に変化が生じ、閉塞した動脈瘤の一部が再度開通することがあります。これを“治療後の再開通”と呼びます。ほとんどの場合治療後一年以内に発生することが多く、そのために定期的な検査(MRI)をお勧めしています。治療後の定期検査にて再開通が発見された場合、その度合いにより再治療が必要となることがあります。再治療は初回治療に比べると比較的安全に、また短時間で行うことが可能です。
■治療成績(国外)
GDCを開発したカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)における治療成績です。11年間で818例の脳動脈瘤患者(916個の動脈瘤)がコイル塞栓術により治療されました。このうち破裂脳動脈瘤は404例、未破裂脳動脈瘤が342例でした。血管撮影上、動脈瘤の完全閉塞が得られたのは55%、小さな残存を認めたものが35%、不完全治療に終わったものが3.5%でした。偶然見つかった未破裂動脈瘤の患者さんでは合併症発生率は4.5% 死亡率は0.5%でした。くも膜下出血で発症した患者は治療後約7%に何らかの後遺症を認め、6%の患者さんが亡くなっています。治療後数年を経て再度動脈瘤が破裂する危険性は5年間で約0.5%でした。
Murayama, et al. J Neurosurg 98:959-966, 2003
■治療成績(施設内)
2002年の血管内治療センター設立当初より、約1000人の患者さんが治療されています。そのうち約90%が未破裂脳動脈瘤の患者さんです。治療に伴う合併症のうち後遺症を残すものは2%未満に認められ、生命の危険を伴う重篤な合併症は約0.6%に認めました。
■まとめ
脳動脈瘤に対する血管内治療は、従来からの開頭手術に匹敵する治療法として認知されつつあります。新しい治療機器や画像診断機器の開発により、さらに安全で確実な方法として進歩する余地がある分野です。当院では従来からの血管撮影室を発展させた新しいコンセプトの“血管内治療専門手術室”を整備することで、治療をより安全に試行するための最大の努力をしております。
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